前回のベトナム人の心がわかる!民話「海の中の神殿」~心が疲れた時にどうぞ~前半では、不遇な若者が自分や他の人の問いを尋ねるために、大きな鯉の背中にの乗って海を渡り、ようやく三府合同にたどり着きました。そこで、鯉が竜になれない訳を尋ねることを頼まれます。
今回ようやく着いた三府で若者はどんな答えをもらうでしょうか?
その4三府の答え
P17
鯉が教えてくれたことを思い出して、学生は神殿の門の前に進み出ました。
腕をまっすぐにして、太鼓の表面を3回叩きました。太鼓の音は鳴り響き、物音一つしない空気を切り裂きました。
貧しい学生はうやうやしく神殿の中に戻りました。すると突然、太鼓が神殿を揺り動かすより、もっと大きな咆哮が聞こえてき ました。
P18
森にいる雄牛と同じぐらいの大きさの白い虎が台座の上に飛び乗り、威厳に満ち、行きつ戻りつしました。
ほんの少しの間、驚いてぼーっとしましたが、貧しい学生はすぐに心を静めて、礼儀正しく尋ねました。
「三府よ、どうぞ。教えてください。なぜ、アサダの丘の麓に居る娘は、これまで話すことができなかったのですか?
白い虎は大きく響く声で答えました。
「その娘は正直な青年が尊い玉を贈れば、口がきけないのが治るだろう。」
言い終わると白い虎は消えてしまいました。
貧しい学生はまた、神殿の門の前に戻って、太鼓を3回叩いて、真ん中の部屋の台座の前に立ちました。
P19
激しい吠え声が響くと、台座の上に白い虎の倍の大きさの黄色い虎が現れました。
貧しい学生は落ち着いて尋ねました。
「三府よ、どうぞ教えてください。
どうして村の老人のみかんの木はもう一本の木と違って、枯れてしまっているでしょうか?」
黄色い虎はすぐ厳かにいいました。
「みかんの根元には二つの金色のかめがある。
それを掘り上げれば、みかんの木はもう一本の木のように青々となるだろう。」
いい終わると黄色い虎は消えてしまいました。
P20
三度目に貧しい学生は神殿の前に出て、さらに3回太鼓を叩きました。
学生は一番最後の部屋の台座の前に戻って立ちました。
再び、前の2回の吠え声よりも、大きく激しい咆哮がしました。
台座の上に黄色の虎の倍の大きさの黒い虎が現れました。
貧しい学生は大きな声で尋ねました。
「三府よ、どうぞ私に教えてください。
どうして東の海の鯉は百年たつのに、まだ竜になることはできないのですか?」
黒い虎は響き渡る声で伝えました。
「鯉はまだ尊い玉を欲張って持ち続けている。玉を吐き出しなさい。そうすればすぐに竜になれるだろう。」
言い終わると黒い虎は神殿全体を揺り動かすように一声長く吠えて、消えてしまいました。
尋ねるよう頼まれた3つの不公平は回答をもらいました。
貧しい学生は満足しました。
学生は神殿の前に戻り、自分のことを尋ねようと、3回叩こうとしましたが、突然やめました。
鯉が教えてくれたことを思い出したのです。「三府には三人の神がいます。一人の神は一つの事しか答えません。」
苦しく困難な旅の果てに着いた三府で、若者は旅の途中で頼まれた問いの答えをもらうことができました。しかし自分の問いを尋ねる機会を逸してしまいます!
その5~三府の答えを伝える~
学生はどうすることもできず 、悲しく来た道を戻り、山を下る道を探すしかありませんでした。
鯉が浮かび上がってくるのを見ると、すぐ 学生は喜んで呼びかけました 。
「鯉君、すぐに尊い玉を吐くんだ 。そしたら すぐに竜になれるよ」
p24
しかし 鯉は急いで 玉を吐き出しませんでした。
鯉 はピシッと尾で水を叩くと 、山の麓に進みました。 貧しい 学生を乗せて 海を越え 、戻ったのです。
貧しい学生が岸に足をつけるやいなや 、鯉は学生の手の中に 尊い玉を吐き出して言いました 。
「尊い玉をあなたに捧げます この玉のおかげで 私はあなたが 三府合同に行くことを知ることができました。」
P25
「今やもう必要ありません 。あなたへの感謝のしるし に 捧げます 。
あなたは自分の中に常に玉を持ちなさい。
玉 はあなたを 聡明にさせてくれるでしょう。
一つを学べば 十を知り、 あなたに多くの幸運をもたらすでしょう」
P26
鯉は言葉を切ったかと思うと、突然体を震わせました 。
突然激しい風が起こりました。
曇って 辺りが暗くなりました。
波は高く、風が強くなります 。
鯉はブルブルッとすると竜になりました。
あたりは また 静かになり 海も 穏やかになりました。 竜は雲に舞い上がりました。
P27
村に帰ると、貧しい学生は日本のみかんの木の老人の家に行き 、三府合同の答えを言いました。
老人はすぐに枯れたみかんの木の根元を掘らせました 。
答えの通り 大きな2つの瓶を掘り上げました 。
みかんの木はあっという間に青々 となり 、芽が出、花が咲き 、枝 いっぱいに実をつけたのです 。
家中 喜んだことと言ったらありませんでした。
老人は金の瓶を1つ 学生に捧げました。
学生は最後まで断りましたが 、老人はどうしてもと断れませんでした。
P28
学生はまた元の道を戻り、 アサダの丘の麓の娘の家に着きました。
彼が門に入ると、娘は迎えに駆け寄り 、彼を見上げて じっと見つめ、 三府の答えを待ったのです。
P29
彼は娘にそっと尊い玉を渡しました 。
すると 娘は突然 言葉を話したのです。
「私は若者の大きな恩に感謝するために何をするか分かります」
P30
老いた父親はこれを見て限りなく喜び 、すぐに娘を彼に嫁がせ 、学問に励むのに便利なように彼を家に置きました。
次の年 試験を受けると 科挙に主席で合格し、 名声が鳴り響きました。
P31
主席合格者が故郷に戻って 祖先の墓参りをする日、 人々は 出迎えに道の両側に押し寄せ、 褒めそやしました。
「 全く天は人の心を裏切らない 。学問や仕事を 根気よく続けることだ」
これで「海の中の神殿」のお話は終わりです。この話は民話の域にとどまらず、深い真理が隠されているように思います。そして、苦しいことにも立ち向かうベトナム人の姿がよく表れています。
他にも3つの民話を翻訳して、公開していますので、こちらもどうぞ!
その中の一つベトナム民話「ヒキガエルは天の神様」~勇気が湧くお話~は、小さく弱いヒキガエルが、世界を救うお話です。