ベトナムで暮らしたいと考えている方、仕事でベトナム人のことを知りたいと考えている方、ベトナム語を学びたい方はいませんか。
まだ、ベトナム語の民話の翻訳は非常に少ないと思います。
ベトナム語の勉強を始めて、民話や物語を読もうと思っても、物語文独特のベトナム語が多く、なかなか理解できません。
そこで!、今日から、私(大好きベトナム語)が翻訳したべトナムの民話「海の中の神殿(Ngôi Đền Giữa Biển)」をご紹介します。
ベトナムで広く売られているベトナムの民話を読んでみませんか?
・ベトナム人が子供から読んできた民話を読んで、ベトナム人やアジア特有の考え方を知りましょう。
・物語特有のベトナム語の理解にもなります
この物語は単なる民話ではなく、どの人にも訴えかける真理が隠されていると思います。
この民話を読んで、ベトナムの人々の考え方の根本を感じてみてください。
「海の中の神殿」
その1不遇な若者が旅に出る
昔、両親を早く亡くし、親戚が一人もいない貧しい学生がいました。お金に困っていても、学生は夢中になって学問に励みました。ただ一つ悲しいことに、学生は本当に真面目に勉学に励みましたが、試験には合格しませんでした。
「東の海に三府合同1と呼ばれる場所がある。不正の犠牲になっている者はそこに行けば答えをもらえる。
ある日、学生は助けてもらおうと、村で一番高齢の老人を探して尋ねていきました。話を聞き終わると、老人は白いひげを撫でて、学生に告げました。
- 三府 民間信仰で(天府、地府、水府の総称) 大修館 詳解ベトナム語辞典より ↩︎
しかし、そこに至る道は遠く、険しい。天と地が尽きるところまで進み続けて初めて、着けるかもしれぬ。」
P4
翌朝、貧しい学生は希望に胸を膨らませ、風呂敷に荷物を包んで三府への道に旅立ちました。
苦難は学生を怖じ気づかせたり、がっかりさせたりしませんでした。
学生はなおも歩き、進み続けました。
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ある日,学生は夢中で,暗くなるまで歩き続け,寝るところを急いで探しました。
アサダの木の丘の下に、小さな家から明かりがちらちらと小さく見えます。学生は喜んで、休ませてくれるよう戸を叩きました。
ひとりの情け深い顔つきをした老人が戸を開け、学生を招き入れて、食事が終わると老人は尋ねました。
「あなたは全く見かけない顔だが、何の用でこんな夜に道に迷ったのじゃ?」
貧しい学生は正直に
「私は学問に励んでいるのに、なぜ試験に全く受からないか尋ねるために、三府合同を探して旅しているのです。」
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学生がそのように話すのは聞いて、老人は嬉しそうな様子を見せました。
「それではあなたに、厄介をかけますが、一つ手助けして欲しいことがあるのじゃが。
わしには一人、しとやかで、行いの正しい娘がおる。
今年、18歳になるが、まだ話すことができないんじゃ。
三府合同に行くついでに、不公平さを尋ねて老人を助けてくれないだろうか? 」
貧しい学生は、快く、すぐ快諾しました。
数日後、老人は学生に、ご飯を握ったものと、お金を一貫渡しました。
「道はまだ遠い。 道に迷ってしまったらいけないから、これを持って行きなされ。」
学生はご飯を握ったものだけをありがたく受け取り、老人に礼を言って、急ぎ、旅に出ました。
P7
東の海に出る道は一足ごとに、大変さを増しました。
しかし、高く険しい山、うっそうとした森も、学生を立ち止まらせることはありませんでした。
今回のベトナム人の心がわかる!民話「海の中の神殿」その1~不遇な若者が旅に出る~では、学生は18歳の娘が口がきけない理由を尋ねることを引き受け、また三府合同への苦難の旅を続けます。次の章ではまた新たな謎を持つ出会いが待っています。
その2~2本のミカンの木~
それから幾日か進み続け、空腹と疲れで、もう歩くことはできないと思ったところに、学生の前に、少し離れたところの集落がちらちらと見えてきました。
学生はなんとか足取りを早め、一番近い家に入り泊めてくれるよう頼みました。
その家の主人は、髪やひげが真っ白で、古くからの友人のように学生をもてなしました。
老人は家の者に、学生のごはんや、寝床を準備するようにいいつけました。
その優しい気持ちに感激し、貧しい学生は正直に今までの自分の不運な道のりと、そして今は三府合同を探す旅の途中だと話しました。
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家の主人は熱心に
「なんて(私は)運がいいのだろう。
それでは、一つ老人のために頼まれてくれないだろうか。
わしにはとても尊い2本のミカンの木があって、互いに近くに植えられている。
しかし、一本の木は一年中青々として、季節になると枝一杯に実がなる。
もう一本はどんどん枯れて、葉は落ち、ほぼ枯れてしまっている。
あなたに三府合同に尋ねてもらって
原因がどこにあるのか、吉兆かそれとも凶兆か教えてくれないだろうか。」
貧しい学生は、また喜んで引き受けました。
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次の朝、家の主人は非常に早く起きて、彼に食べ物の包みを渡し、丁寧に教えました。
「三府合同はある時は隠れ、ある時は姿を現し、あるかと思えば、消え、今日ここにあるかと思えば、明日は別の場所にあると聞きます。
忍耐強く、意思を強く持って初めて着くことができるそうです。」
学生は感銘を受けて
「ご老人、ありがとうございます。
どんなことがあっても、私はそこに着くことだけを心に決めています。」
東の海に出る道は大変深い淵に岩がそびえているところがあちこちにありました。
幾度か貧しい学生は淵に落ちそうになりました。
食べ物が尽きると、野生の実を食べねばならず、渓谷を探して水を飲まねばなりませんでした。
どんなに苦労や体の疲れても、彼はなお三府合同への道をたどることを決心していました。
貧しい学生は、苦難の道の中で1本のミカンの木がなぜ枯れてしまうのか三府合同に聞くことを頼まれました。
ベトナムに暮らしていた頃、私が感じたベトナムの国民性の一つに、この学生のように苦難を恐れず挑戦するがあります。この学生そっくりです。
なおも苦しい旅を続ける学生の前に、大きな鯉が現れます。
その3~大きな鯉の頼み~
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それから、大変な日々が何日たったことでしょう。
貧しい学生は広大で、白い波が折り重なる、人影のない海へようやく着きました。
学生はどちらの方へ行ったらいいか、思いあぐねていました。
すると、突然、一匹の巨大な鯛が水面に顔を出しました。
鯉はすいすいと岸辺の学生の方にに泳いできて、大きな声で尋ねました。
「あなたは三府合同に行こうとしているんでしょう?」
貧しい学生は驚いて答えました。
「そうだよ。鯉君は何をしたいんだい」
「私の背中に乗ってください。私がそこまで連れて行ってあげましょう」
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貧しい学生は本当に喜んで、お礼を言って鯉の背中に乗りました。
鯉は波をかき分け、波をかき分け東の海に出て、白波の上に突き出ている高い岩山を過ぎていきました。
太陽が真上に来る時になって、やっと鯉は高い岩山のふもとに学生を連れてきました。
P13
その場所の景色は本当に見たこともないものでした。
香りのよい花、変わった草はしなやかなサンゴの風景とまじりあっています。
きらめく石の花なのですが、色んな色に輝く、高くそびえるほら貝の殻なのです。
鯉は学生に告げました。
「あなたは山の頂上までずっと上ってお行きなさい。古い神殿に着くでしょう。
神殿の門の前にはとても大きな太鼓がかけられています。
3回太鼓たたいてください。
あなたに答えるために、順々に 三府が現れるでしょう。
三府はそれぞれ一つずしか答えません。 」
P14
言い終わると、鯉はさめざめと涙を流しました。
「慣例では、十年経ったら鯉は竜に変わるのです。
なのに、わたしはもう百年近くなるのにまだ竜になることができません。
あなたが三府に会ったら、私が竜になれない訳を尋ねてもらえませんか?」
前の2回と同様に貧しい学生は喜んで引き受けました。
学生は鯉の背中から離れて、一年中濃い霧に包まれた山の頂上にのぼっていったのです。
学生は鯉の助けを借りて、三府合同の宮殿にたどり着きます。三府はどんな答えを学生に与えるでしょうか?
次回ベトナム人の心がわかる!民話「海の中の神殿」~心が疲れた時にどうぞ~後半をお楽しみに
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