ベトナムの民話:ヒキガエルは天の神様~勇気が湧くお話~後半

前回ベトナムの民話:ヒキガエルは天の神様前半 天に上って大干ばつの理由を尋ねる覚悟を決めたヒキガエルに、とうとう虎やヒグマまでも従うことになりました。

・ヒキガエルの一行

このように虎とヒグマも一団に加わることになりました。

ヒキガエルは葉っぱの旗を高く掲げ、高い石の上に飛び乗り、座りました。

ヒキガエル一族やカエルの女子供達は、周りにしゃがみました。

金のニワトリは倒れた古い木の上にとまります。

ミツバチ達は、ブンブン飛んでいます。

金色の虎はヒキガエルの傍らで顔を向けて、唸り声をあげ

ヒグマはもう一方に立ち、2つの手でいつでも叩けるように身構えています。

ヒキガエルは大きな口を開け、お腹を膨らませて息を吸い、真っ赤に染まる天を見渡して、響き渡る声で皆に告げました。

「今や天に上ることができる!天は我々に耳を傾けなければならない!ヒキガエルは覚悟がある。カエル達は敏捷、ニワトリはくちばしがあり、ミツバチには針があり、虎は力があり、ヒグマは登る力がある。みんな、ヒキガエルに付いて天に上ることを承知するか?」

カエル達は賑やかに承知します。

ニワトリは翼をバタバタして挨拶します。

ミツバチは空中で飛び回って踊りました。

虎は歯をみせて、爪を開きます。

ヒグマは大きな木に登って、木登りを自慢しました。

このように一団は皆、勢いづいて進みました。

ヒキガエルは真ん中で葉っぱの旗を高く掲げ、片方にはニワトリ、もう一方には縞模様の虎とヒグマがいます。

後ろにはヒキガエルの一族、カエルの女子供達が、賑やかに跳ねています。

一団の皆は息が詰まる真っ赤な砂塵の中、ただヒキガエルの緑の旗だけが浮かんでいました。

ヒキガエルが率いる動物達がついに天に上ります。お楽しみに🙇

・天の門

長く長く、一団はひどく焦げ臭い、息がつまる砂塵の中を進み、一刻一刻灼熱の暑さとなり、肌は腫れ、肉を焼きました。

ヒキガエルの旗は黄色くしおれ、めくれ上がってしまいました。

しかし、一行はなおも進み、ついに天の門の前に着いたのです。

動物達の目はぴったりつぶっています。

それは一団をすぐにも燃やし尽くし、灰にしてしまいそうな、燃えるような赤い炎と火傷するような暑さの為でした。

見上げるように高い天の門はしっかりと閉まり、両側には城壁が立ちはだかり、全て滑らかな石でできているので、上ることができません。

「道はどこにあるのか、これ以上進めようか!

蛙よ蛙!天の神様に会うのは全くたやすくないではないか!

ヒキガエルよ、ヒキガエル、どうするのだ」

ヒキガエルは腫れて突き出た目をようやく開けると、思いがけず城壁の上に、高い見張りやぐらがあるのを見つけました。

見張りやぐらには大きな太鼓があります。

ヒキガエルはヒグマに告げました。

「ヒグマよ、あなたは跳び登って下さい。天の神が何事かと出て来るよう、太鼓を3度鳴らして呼ぶために。」

ヒグマはヒキガエルの言葉の通りに、力いっぱい飛び上がり、見はりやぐらに上りました。

太鼓のバチを握るやいなや、3度打ち鳴らし、城郭中を揺り動かし、天の神の宮殿を中を揺らしました

今回ベトナムの民話:ヒキガエルは天の神様🐸その8天の門ではまずはヒグマが活躍し始めました。動物達に、天の神や天の神を守る軍団も黙ってはいません。

動物たちが天に上ってきたことに、神様が気づきます。神様は動物たちに何をするでしょうか?

・雷神

天の神は雷神と気楽に将棋を指していました。

太鼓の音を聞くと、神は将棋の手を休めて尋ねました。

「神の宮殿を さわがせようとする大胆な奴は誰だ。 私が将棋を指している時には誰であろうと、太鼓を鳴らすことは禁じたはずだ。」

天の兵士たちは慌ててかけつけ、城の外にヒキガエルが軍を率いて取り囲み、天の神と会って話したいと求めていると奏上しました。 

将棋の盤を玉の庭に放り投げ、どなりつけました。

「ヒキガエルは卑しい奴で、 見るのも気味が悪い。神なら誰もそんな汚いものと話したいものか。

太鼓の音はますます響き渡り、うち鳴らされました。

神は怒り狂って雷神に向かって告げました。

「軍の将軍は稲妻と雷鳴を起こしてヒキガエルを殺してしまえ。 」

雷神は手斧の刃を持ち、風に乗って出て行きました。

城門が開くやいなや、カエルたちは稲妻と雷鳴のような怒鳴り声で、まばたきがギラギラしている雷神を見つけ、うろたえて逃げ、トラまでもが風で飛ばされたので退きました。 

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ヒキガエルは葉っぱの旗を掲げ、広い口を開け、お腹いっぱい息を吸うと大きな声でいいました。

「蜜蜂はどこだ?飛んで急に襲って、雷神の目や鼻を指すんだ。」

蜜蜂の群れはブンブン飛んで、突撃し、雷神の目や鼻を狙ってさしました。 

雷神は突然の攻撃でボーっとしてしまい、稲妻も雷鳴も起こすことができず、風に乗って城の中に逃げ込みました。 

城門が閉まらないうちにカエルたちは跳びはねて入りました。ほかの動物たちも雷神を追いかけました。 

ヒグマは見張り櫓の上に立ち、太鼓をドカンドカンとたたきます。動物たちは勝利の喜びの声をあげました。 

・ムカデの神様

雷神が戦いに敗れ、ヒキガエルが城壁に入ったという知らせを聞いて、神様は怒りを爆発させました。

ムカデの神様は竜の石段の下に立って、掃討に出ることを願い出ました。

神様はうなずいて、ムカデの神様に行くよう命じました。

「軍将は毒を吹き出し噛みついて、ヒキガエルを死なせよ」

ムカデの神様は体をよじって出ていき、うじゃうじゃとした足、毒をピューピュー吹き出し、顎をカチカチ噛みました。

何千何万のムカデが後に続きました。

ムカデの神様が真っ黒な軍勢を率いているのを見て、カエルたちは叫び、トラまでもが退きました。

なぜなら、ムカデの毒が自分に吹きかけられたら、ぎりぎりと痛み、体全体がしびれてしまうからです。

ヒキガエルは旗を高くかかげ、大きな口を開き、息を吸ってお腹を膨らませ、大きな声ででいいました。

「鶏はどこに居るのか?飛んでいって、ムカデの頭をついばむんだ。 」

鶏は一声鳴いて、金色の背中を伸ばし羽をバタバタ言わせました。

嘴を高く上げ、ムカデの神様の頭を狙い、ムカデの将をお腹の中に飲み込んでしまうと、 鶏はなおも続けざまについばんでいき、瞬く間にムカデの軍を散り散りにしてしまい、なおも生き残ったムカデは泣き叫んで、走って帰りました。

ヒキガエルは仲間たちを率いて、追いかけて行きました。 

クマは見張り櫓に立って、ドカンドカン太鼓を叩きました。 

動物たちは勝利の喜びの声を上げ、神様のいる宮殿に近づきました。 

ムカデの神様が戦いに破れ、ヒキガエルが近づいてきたという知らせを聞いて、神様は怒り、また心配になりました。 

天神、天将,天兵は神様の周りにどっと集まり、ヒキガエル、を打ちに出て行くことをひざまずいて請いました。

天の神は神たちが威厳があって意気盛んなのを見て、安心し、神たちが戦いに出て行くよう命令を出しました。

ヒキガエルはなおもカエルたち、鶏、ミツバチ、トラを率いて進んでいきました。 

見張り櫓の熊の太鼓の音は 鳴り響き、 仲間たちを励ましていました。 

きらびやかなよろいをつけ、剣を持ち、長い鉾を持った何千何万の天神、天将,天兵はわあわあどなり、猛々しくヒキガエルを打ちに突進してきました。

10ムカデの神様では恐ろしい毒を持つムカデの軍隊を撃退しました。動物たちに、今度は天の軍隊が襲ってきます。さて、動物たちはどうなるでしょう?

・天の軍隊(最終回)

ヒキガエルは旗を高く掲げ、広い口を開き、お腹を膨らませて息を吸い、声を響かせて言いました。

「トラよ、突っ込んで彼らを打ち破るんだ!」

トラは背伸びして、牙をむき出し、爪を開き、一声唸り声をあげると、天神、天将、天兵達の軍団に飛びかかっていきました。

瞬く間に、首を切られた者、手を失った者、鎧が破れた者がいます。

天神、天将、天兵は混乱して死に、生き残った者は泣いて宮殿の中に走り込みました。

トラは飛びかかって追いかけました。

ヒグマは見張り台の上でドカンドカン太鼓を叩きました。

ヒキガエルは高く旗を掲げ、動物達は勝利の喜びの声を上げ竜の庭に近づきました。 

ヒキガエルは庭の真ん中に座り、蜜蜂は顔の前をぶんぶん飛んでいます。

ヒキガエルの片側には金の鶏が、もう片方にはトラがいます。

カエル達はその周りをぴょんぴょん跳んでいます。

ヒキガエルは旗を高く掲げ、神を呼びました。

「神様、ここに出て、私達に尋ねさせて下さい。ヒキガエルは神様にただ一つのことを尋ねるだけです。この数年、どうして神様は雨を降らせず、川を干上がらせ、木々は燃え、鳥は焼かれ、動物は燃やさせるのですか?」

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神はヒキガエルがすぐに自分を殺しに来ると心配していました。

ヒキガエルがそのように話すのを聞いて、神は落ち着きを取り戻しました。

神は「今までこの国で、話に出て行くのはヒキガエルとだけだ。あの者はあんなに醜いのに、なんと覚悟があることよ」

そこで神は竜の石段に立ちました。

神は尋ねました

「ヒキガエルは私に会って何をするのか」

ヒキガエルは畏まって、

「ヒキガエルここに来たくて来たわけではありません。しかし、神は干ばつを引き起こし、地上では私達は今にも死んでしまいます。それで天に上って、神にすぐ雨を降らせてくれるよう頼まなければなりませんでした。」

神はにっこりして、頷いて言いました。「他のことはいざ知らず、簡単だ。さあ、ヒキガエルは帰るがよい。私は今すぐ雨を降らせよう!」

神様が話し、ヒキガエルに下界を見るよう告げました。

神様は言うと、雲がびっしり寄って来ました。雨が降り始め、一気に四方全て真っ暗になりました。

ヒキガエルは満足して振り返りました。

蜜蜂はぶんぶん飛び、金の鶏は金の背中を伸ばし、虎は背伸びして、嬉しそうに鳴きました。ヒグマはますます太鼓を強く叩きました。

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ヒキガエルは不意に振り返って、神様に尋ねました。

「これから、干ばつのあった時はどのように神様にお知らせすればいいですか」

神様は言いました。

「ヒキガエルはもう上って来なくてよいぞ。上って来るのは一回でたくさんじゃ」

「でも、どうやって?それとも私は神様とお約束します、干ばつの時は私はいつも歯ぎしりします。私が訴えているのを神様が聞いたら、すぐ雨を降らせて下さい。そうすれば、ヒキガエルは上って行かなくてもいいのですが」

神様は言いました。

「わかった!わかった!もう上って来るな。もう上って来るな。私がヒキガエルが歯ぎしりしているのをきいたら、すぐ雨を降らせよう」

ヒキガエルは神様に別れを告げ、仲間を率いて戻っていきました。

こうして空はもう暑くなく、風が爽やかに吹いていました。

下界に戻るとヒキガエルは川に水が溢れ、木々が青々とし、鳥は高く飛び、動物達は群れごとに胸を張って進んでいるのを見ました。

ヒキガエルの一族は大勢で、賑やかにぴょんぴょん跳ねて、ヒキガエルを迎えに出て来ました。

今までの疲れで、ヒキガエルは自分の静かな穴に戻ると、横になって休みました。

ヒキガエルは歯ぎしりをしてみようと思っていましたが、雨が降っているのを見ると、やめました。

ヒキガエルは軽く息をつくと、まぶたを閉じ、そして心の中で笑みを漏らしました。

この時から、ヒキガエルが歯ぎしりするといつも雨が降ります。

ヒキガエルはこのように威厳があるので、私達はヒキガエルをまた天の神様と呼びます。

年長者逹はまた、どの人もヒキガエルを叩いてはいけないと諭します。

醜いけれど、ヒキガエルは功労者で、とても性格が良いのです。

まとめ

翻訳中に感じた日本とベトナムの文化の違いを書きたいと思います😊

主人公のヒキガエルが歯ぎしりする(ベトナム語の本文中ではnghiến răng)と何度も出てきます。

日本語では、カエルが歯ぎしりをとは言わず、カエルが鳴くと言いますよね。

でもカエル🐸がケロケロ鳴くのが、歯ぎしりのように、ベトナムでは感じられたんですね!!

他にもベトナム民話を訳しています。その中の一つベトナム民話海の中の神殿~心が疲れた時にどおうぞ~はこちら

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